「木に学べ」から学ぶべき事-17年ぶりに読み返したら

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この本、実は17年ぶりにひっくり返して読んだのですが、さすが17年も経つと、ほとんど新刊と同じで、何も覚えてないだろうなぁ、と思ったら、読んでいくうちに次の展開を思い出してしまい、結局大体は覚えていました。物覚えの悪い私にしては、珍しい出来事です。

経営、自分、上司、同僚、顧客に置きかえて読むと、なるほどと思います。単に仕事だけによらず、普遍的で含蓄に富んでますね。もしかすると、弊社の価値観の基礎を作る上で、大きな影響を受けているかも知れません。若い頃読んだ本はあなどれません。

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木に学べ-法隆寺・薬師寺の美 / 西岡 常一(薬師寺宮大工棟梁)(著)

 「そこへいくと飛鳥の大工はえらかった。なにせやね、仕事が早
  い。今の人は便利な工具持ってるくせに時間がかかるわな。
  薬師寺でもそうですわ。飛鳥の時代に、七堂伽藍全部とほかに
  14棟の建物作ったんですが、それが14年でっせ。わたしら
  は19年かかってやっと金堂と西塔と中門しただけですわ。昔
  は工具かて今のようなもんやなくて、全部人の手でやったんで
  しょう。優秀な人がたくさんいたんですな。総棟梁が一人で、
  “おまえ西塔やれ”“おまえ東塔やれ”言うだけででけたんや」

  「今薬師寺の西塔を作っている訳ですが、全国から腕自慢が堂
  やってみようという気持ちで来ますな。そういう人はクセが強
  いわな。木と同じや。ところが、木は正直やが、人間はそやな
  い。わたしの前ではいい顔してるけど、かげでどう働いてるか
  わからへん。だから木組む前に人を組めといったんですな」

 「棟梁いうのはなんかといいいますと、木のクセを見抜いて、そ
  れを適材適所に使う、ことやね。木というのはどれも同じなよ
  うで、育ってきた環境でクセが出来てくるんです。それをうま
  く組まなければならない。そのためには、まず人の心を組まな
  ければあきまへん。50人おったら、50人が私と同じ気持ちにな
  ってもらわんと良い建物はできまへんな」

 「今の大工は耐用年数のことなんか考えておりませんで。今さえ
  よければいいんや。とにかく検査さえ通れば、あすはこけても
  ええと思っている。わたしら千年先を考えてます。それと使う
  側も悪い。目先のことしか考えない。」

 「周囲の人で、自分よりうまい人を見て、おぼえなあかんのや。
  盗みとるんや。その人の技量をね。教えられても、ようおぼえ
  んもんや「あ、そうですか、あはは」これで終わりでしょ。自
  分からやって、どこが加減悪いのかちゅうことを自分で知らん
  事にはあかんわね。」

 「法隆寺は飛鳥時代の大工達が知恵を出し切って作ったんですな。
  だから1,300年以上残った。飛鳥時代には他にも寺が造られてい
  ますが、ここだけが残った。聖武天皇のとき、各地に国分寺を
  建てましたが、一つとして残ってませんでっしゃろ。あるのは
  跡だけ。そのころの大工が、無理矢理集められて、いやいや作
  ったからや。早く終わらせて帰りたいと思って造ったんやろな。
  今の大工にも似たところがありまっせ。時間を急いで、木の使
  い方も考えずに、納期や寸法だけ合わせればいいって考えてや
  れば残りませんわな。」

 「穴を打たせても、ぴかっと光るような人と、じゃぎじゃぎの穴
  しか掘れない人もいます。起用、不器用というものがあるんで
  す。不器用な人は、どことんやらないと得心が出来ない。こん
  な人が大器晩成ですな。頭が切れたり、器用な人より、ちょっ
  と鈍感で誠実な人の方がよろしいですな」

 「ほかの頭領とのつきあいというのもおもしろいものでしたな。
  お互いに相手の力量というのを見るんですな。値踏みをするん
  です。あの頭領にこんな仕事したら、後でやりなおしさせられ
  るとか、あの頭領に言われたら、これだけの仕事をしなければ
  ならん、という事を知っている訳です。逆にこちらもそれぞれ
  の仕事を見抜けなければならん。気に入らなかったら、やりな
  おしさせるわけですからな。」

 「竹島先生は今、病気で伏せておられますけど、結局(法輪寺の
  再建に指示通り鉄を使わなかったことを)知らずじまいだった
  でしょうな。当時、学者さんとの大論争っても、結局の所は大
  げんかです。私は今でも思っています。いらん事を言う人がお
  らなんだら、もっといいものが出来たのにって」

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