ホンダの熊本工場からIT業界が学ぶべき教訓-システムを作らない現場に、真の設計力は育たない

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少し古いニュースになりますが、自動車メーカーのホンダが、熊本に330億円を投資して、新工場を今年の4月から稼動させています。

海外生産が進んでいる日本のメーカーにおいて、なぜホンダが熊本工場にあえて巨額の設備投資をしたのか、雑誌にその理由が書かれていました。それは概ね以下のようなものでした。

「海外の工場に優先的に投資してきた結果、そちらはどんどん進化する一方で、国内の工場がすたれつつあった。そんな状況で国内の工場が国外の工場を指導できるはずがない。2002年には大規模なリコールも起こした。モノ作りの力が弱まってきているという危機感があった。つまるところモノ作りのキーは上流部の設計にかかっているが、生産と設計が一体化していないと、マザー工場の力は衰えてしまう。だからこそ工場への投資を決断した」

これを読んでどこかで聞いた話だな、と思ったのですが、バブルがはじけた頃のシステム業界とまるで同じだという事に気付きました。

80年代、世間でバブルがはじけると、大手企業の多くで、すさまじい勢いでコストカットを進めます。その結果、自社の基幹業務系開発を手がけていた社内の情報システム部は、その多くが子会社として本社から切り出され、又はシステム会社に売却されていきました。開発の企画、設計といったコアの機能は本社に残し、実働部隊といったそれほど付加価値の高くない部隊を社外に放逐していった訳です。

ところが、システムを作らない情報システム部のシステム設計能力には、やはり限界があります。その結果、多くの大手企業では、自社のシステム構築の力がかなり衰えてしまい、基幹業務系の開発では失敗事例がかなり出ました。この辺は日経コンピュータの「動かないコンピュータ」などに良く詳しい事例が出ています。

ホンダの話を読んで、まさにその事を思い出しました。例え車であろうとも、無体物であるシステムであろうとも、結局の所、下流工程と言われる「モノ作り」をしないで、上流工程の設計等を鍛える、と言うのは、ともするとただの机上の空論になりがちなように思います。


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