本を読んでいると、極まれに、全然バックボーンやジャンルの違う作家が、著書の中で同じ様な教訓、あるいは考え方、価値観が書いているのを発見することがあります。このような「宝石」を見つけるのは、読書の至福の一つです。
先日、そんな「宝石」を一つまた見つけました。
おそらく中小企業経営向けののコンサルタントとして、今や業界では知らない人はいないという位有名になられた小山昇社長の本の中にその「宝石」はありました。
小山昇さんは私も好きな経営コンサルタントで、よく氏の本を買います。この本もつい先日買ったばかりでまだ読みかけなのですが、本の中にこんな記載がありました。要約すると、こんな感じです。
◆理不尽な思いをしなければ人は育たない
・・・社長は取引先の社長に「ウチの息子を鍛えてやって欲しい」としばしば修行として出すが、ほとんど見当違いと言わざるを得ない。取引先の社長の息子と言えば当然跡取りな訳だから「お客様」であって鍛えるわけが無いからだ。これじゃ二代目がボンクラになるのも無理は無い。でもうち(株式会社武蔵野)は違う。徹底的にスパルタで鍛える。徹底的に理不尽な事をする。なぜなら、人は何度も理不尽な思いをする中で、社会とか、人間関係とか、仕事の本質を覚えていくものだからです・・・
今のご時世、スタッフにこれをやったら速攻でパワハラで訴えられてしまいそうですが、将来人の上に立つ社長を養成する上では、個人的にはとても大事なことのように思います。ある意味「英才教育」ですね(それでもさじ加減が難しそうですが・・・)。
ところで、この文章を読んで、おや、と思いました。
というのも、この「理不尽が人を育てる」という内容に、思い当たる節があったからです。
実は以前、私はこのブログでグッドウイルグループの折口会長(当時)の著者について、こんな事を書きました。
- 100円玉の重みが語る借り物ではない言葉のチカラとは: Web屋の社長は考えた
この本には、読むとまさに波瀾万丈の人生を、自分の才覚で乗り切ってきた事が書かれており、一度読み出すとあっという間に引き込まれてしまい、一気通読を止めることが出来ません。
小さい頃、父親の会社が倒産し、生活保護を受けながら自衛隊関連の高校に入る事(高卒資格が貰える上に給料が出るのでカネがかからずしかも家に仕送りも送れるため)。自衛隊入隊後、夜の消灯時間、こっそりと布団の中で電気を付けて受験勉強をし、なんと防衛大学に入学出来た事。
5分後にグラウンドに出てぐちゃぐちゃの雨の中を走り回るにもかかわらず、クツをすり減るまでぴかぴかに磨かされ、少しでも汚れていると猛烈なペナルティを受ける矛盾を通じて世の中の不条理さを学んだ事。卒業時任官拒否し、民間に就職し、ベルファーレやジュリアナの立ち上げで大成功するがパートナーに裏切られて会社をクビになった事。その後人材派遣会社を立ち上げ、大成功する事・・・。
人は誰しも、社会に出て理不尽さを通じて世の中や仕事についての本質を学びます。小山社長さんは預かった跡取りの育成、折口さんは防衛大学でのエピソードですが、そこで語られている本質は同じです。
かく言う私も、新卒で入った会社で、しばしば理不尽な経験をしました。
例えば入社後間もなく、同僚に連れられて呑みに行ったときの事です。とあるバーに行くと、工場長が呑んでいるところに偶然鉢合わせをしてしまいました。その工場長は結構人の好き嫌いが激しく、口が出る前に手が出るタイプの筋肉ムキムキの武闘派で、おまけにお世辞にも酒癖が良いとは言えませんでした。見事なまでに★★★コンプですね。
そして私はどうもその三つ星コンプ工場長から結構「好かれて」いたようで、「これはやばいな」と奥のボックスに座るなり、「おい、田中」とカウンターで呑んでいるその三つ星コンプ工場長に呼び出されてしまったのです。こっちのコンプはいらないのよと嘆きながら「はい、何でしょう」と近づくと、その三つ星コンプ工場長(以下面倒なので★★★と略)はおもむろに靴を抜ぎ、その靴で思いっきり頭を一発バコーーーン!!と殴ってきたのです。どうです、なかなかの理不尽さでしょう?勿論今こんなことをしたら下手すると刑事告訴ものですが、私が若い頃はこういう人は社会のあちこちにわずかながら存在していたように思います。さすがに今は絶命危惧種だと思います。
この★★★にありがとうございます、とても感謝しています、と今満面の笑顔で言えるほど人間が成長したかどうかは私自身定かではありませんが、にしても、結果的に自分が成長する上で、このような理不尽な行為が、大いに貢献してくれたのは間違いがありません。
理不尽さというものを積極的に活用しましょう、という事を言うつもりはありませんし、私個人としてもしたことはありません。理不尽な環境で育つと、逆に反面教師になりますので、かえってしなくなるものです。
しかし、ある種の理不尽さが、時として人としての成長を助けてくれるのは事実で、結局愛があるかどうかが何よりも大事なのだと思います。小山さんと折口さん、二人の全くバックボーンの異なる経営者が、同じ教訓を語っている事は大変興味深く、良い「宝物」を見つけることが出来たなと思っています。
あ、★★★さん、根に持ってないですよ、ホントに。もぞもぞ(←靴脱ぎ出す)。気に入ったらポチっと御願いします→
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