「汚いものでも見るような目で見ないでくれ!」と車椅子のおじいちゃんは言った

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先日、健康診断でとある病院に行ったのですが、そこでちょっとした出来事がありました。

  

受付兼待合室で「初診ですか?」「はい」などと普通のやりとりをしていると、玄関がちょっとざわざわしています。

  

何しろ玄関は受付から歩いて2歩くらいのところにあるので、何か起こればすぐに分かります。

  

ん?と思って入口の方を見ると、婦長さん(と後で判明)と車椅子に乗ったおじいちゃんが何やら話し込んでいました。

  

「どうしてダメなんだ!」

  

「先生から言われていまして、病院内は土足厳禁になってるんです」

  

「じゃあどうしろっていうんだ」

  

なんだなんだなんだ。どこにでもある街の小さな病院ですから、思いっきり丸聞こえです。ちなみに待合室には私と女子高生二人しかいません。

  

段々声が大きくなってエスカレートしてきます。

  

「なので今病院内にある車椅子をすぐ持ってきますので、すいませんがそちらにお乗り換え頂けないでしょうか」

  

「ドキンってなんだ!あんた、俺がそんな汚いっていうのか」

  

「いえ、そういう事を言いたいわけでは無くてですね、、、病院のルールになっていまして、とにかくそのまま外からお入り頂く事は出来ないんです。車椅子お持ちしましたので、お乗り換え頂けないでしょうか」

  

「そんなの車椅子だから無理だよ!あんた汚いものでも見るような目で見ないでくれ!」

  

「そんな、、汚いような目で見てはいません、、、先生から言われていますので、そのままでは病院内に入る事が出来ないんです」

  

婦長さんは特段きつい言い方をしている訳でもなく、端から見ている分には全く普通の応対でした。そして狼狽した様子も見せず(慣れてる?)淡々と対応しています。話を聞いている限りでは、病院内土足禁止は当たり前ですので、特段無理をいっているわけでもありません。

「大体どうやってこの車椅子からそっちの車椅子に移るんだ!」

  

「上半身私が抱きかかえますので、、」

  

「そんなの無理だよ、全身を持って貰わないと。できるわけないじゃないか。それに俺は腰が痛いので愛用のマットをひいてるんだ」

  

「それも一緒に移しますので・・・」

  

「どうやってだよ。そんなの無理だろ!」

  

段々言いがかりみたいな状態になって来ました。医療事務の若いお姉ちゃんが慌てて車椅子を持ってきたものの、オロオロするばかりです。

  

よく見ると、横にスーツを着たおじさんが気配を殺してそっとつきそっているではありませんか。首からネームカードを下げており、無言で立っています。どうやら介護施設からのつきそいのようでした。なるほど。おいネクタイのおっさん、いい加減この車椅子おじいちゃんをとめなさいよ・・・。

  

だんだんおじいさんの声が大きくなってきました。何しろすぐ目の前でやっていますので、このままぼけっと突っ立ってるわけにもいきません。意を決して火中の栗を拾うことにしました。

  

「えーと、あの、すいません、もし宜しければ、私が補助しますので、病院の車椅子に・・・」

  

「そんなんいいよ別に」

  

瞬殺で断られました。

  

念のためタイミングを見計らってもう一回言いました。

  

「あの、私でよければ、多分補助できるので・・・」

  

「いやいいよ。なんでダメなんだよ車椅子が」

  

「いえ、ですから、車椅子がダメなのではなくて・・」

  

と、また瞬殺で無視されてしまい、私は存在しなかったかのように流れるように押し問答ループ状態に戻っていきました。

そしていい加減業を煮やしたのか、ここで婦長が柔らかく一撃をお見舞いします。

  

「あの、車椅子から移れないという事なのですが、、では、今日こられたタクシーにはどうやって乗られたのでしょう?」

  

「あん?そ、そんなん★んkg5^03えtmろf;そcklcg♪」

  

と良く聞き取れませんでしたが、おじいちゃんのLvがちょっと下がりました。

  

ここでとうとう介護でつきそっていたでくの坊、じゃなかった(すいません)ネクタイのおぢさんが動きます。

  

「あのですね」

  

でく、いやネクタイよ、ついにこの意固地になった暴走車椅子おじいちゃんをいさめてくれるのか?

  

「なんでこのまま病院の中に入ったらダメなんですか?外は寒いんですよ。早く中に入れて下さいよ」

  

そこかい!そっちかい!!

  

結局この無限ループをもう少し続けた後、おじいちゃんは

  

「もういいよ、他の病院に行く」


・・・しばらくの間

  

「え、、、そうですか、、、、申し訳ありません・・・」

  

と険しい顔をしたでくいやネクタイとともに外に出て行きました。

  

そして出て行こうとした瞬間、デクネクがどこかに電話をかけだし、会話が漏れ聞こえてきました。

  

「ああ、、○○です、どもです。いえ、今ですね○○病院に来ているんですけど、ちょとトラブルになりましてね、ええ・・・」

  

トラブルおこしたのはどう見てもそちらなんですが、どういうことそれ・・・・。

  

当事者ではありませんが、さすがにイラっとしたので、そのでくの坊ネクタイと暴走車椅子じいちゃんがいなくなった後、持ち場に戻ろうとした二人に

  

「トラブルって、一体誰が起こしたんだですかねぇ」

  

と言うと、

  

「ええ・・・まあ困った患者さんですけど、たまにああいう人いるんですよね。後でいろいろと病院の悪口吹聴されても困りますので平身低頭で対応しますが、扱いが面倒で疲れます」

  

と実際は「ええ・・・」と小声で言っただけなんですが、後は私が行間を読んで付けたしました(をい)。

最初の会話を聞いていませんが、おそらくちょっとした言い方が車椅子おじいちゃんのカンに触って意固地になってしまったのかも知れません。私にもう少し説明、説得能力があれば、そのおじいちゃんの心をほぐして、気持ちよく待合室に入って頂く事が出来たかも知れません。せめてトランプ大統領並に説得力があればと反省しました。

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写真と本文に関係はあまり無く、この写真にした事に他意もあまりありません

  

暴走車椅子おじいちゃんとデクネクが去った後、しばらく病院内に微妙な空気が流れていました。でも私はなんか良いことをした気分で、心なしか医療事務の女性の微笑みも三割増しのような気がしましたが、単にジコチューおじさんの勘違いだと思われます。こういうのが将来暴走おじいちゃんの予備軍になるんですね。

  

あ、札幌で制作アシスタントスタッフ募集中です。在宅もOKです。よろしくお願いします。

  

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